海外輸送のダンボールの選び方

海外へ送った荷物が潰れて届く。越境ECをやっていれば、一度は経験する話だと思います。中身をどれだけ丁寧に緩衝材で包んでも、箱そのものが負けてしまえば意味がありません。
弊社の結論はシンプルです。海外へ送るなら厚さ8mm(W/F)を基本にしてください。小さくて軽いものに限り、5mmの「強化芯」タイプまで。これだけです。
なぜそうなるのか、数字で説明します。
そもそも「5mm」「8mm」とは何の数字か
段ボールの厚みは、中に入っている波形(フルート)の高さで決まります。全国段ボール工業組合連合会が公開している規格値は次のとおりです。
| 種類 | 段の高さ | 30cm当たりの段数 |
|---|---|---|
| Aフルート | 4.5〜4.8mm | 34±2 |
| Cフルート | 3.5〜3.8mm | 40±2 |
| Bフルート | 2.5〜2.8mm | 50±2 |
注意したいのは、この数値が中芯だけの高さだという点です。実際の段ボールにはこれに表裏のライナー(紙)の厚みが加算されます。だから現場では「Aフルート=約5mm」と呼ばれています。
W/F(ダブルフルート)は、AフルートとBフルートを貼り合わせた二重構造です。合計すると約8mm。よく聞く「5mm」「8mm」は、この違いを指しています。
海外で箱が潰れる、本当の理由
「強度不足」の一言で片付けられがちですが、原因は分けて考えたほうがいい。ここを理解しておくと、なぜ8mmなのかが腑に落ちます。
湿気だけで強度が半分以下になる
NX総合研究所(日本通運グループ)の資料によると、段ボールは含水率8〜9%のときに最も高い強度を示します。ところが、「夏季や海上コンテナ輸送時など、相対湿度が80%を超える状況になると含水率は15%を超え、強度は半分以下に劣化してしまいます」とされています。
ここが落とし穴です。カタログに書かれた耐荷重は、乾いた状態で測った数字です。海上コンテナの中で結露が起きれば、その半分以下で考えなければいけません。雨に濡れなくても、湿度だけで落ちます。
積み方のズレで、さらに6割落ちる
もうひとつ、あまり知られていないのが積み方の影響です。同じくNX総合研究所のデータから。
- まっすぐ積まれた状態を100%とすると、約13mmズレるだけで強度が29%劣化する
- 棒積みでズレた場合の劣化は12〜21%
- 交互積み(互い違いに積む)でズレた場合は、54〜61%も劣化する
海外輸送では、自分の荷物がどう積まれるかを選べません。パレットに交互積みされ、輸送中に多少ズレる。これは前提として織り込むべきです。
湿気で半分、積み方でさらに半分近く。この2つが重なったとき、国内基準の箱では持ちません。8mmを勧めているのは、精神論ではなくこの掛け算のためです。
「強化芯」は厚みの話ではない
5mmを選ぶなら強化芯、と書きました。この「強化芯」を厚みのことだと誤解している方が多いのですが、違います。
中芯には坪量(1平方メートルあたりの重さ)による規格があり、標準は120g。材質の指定がない一般的な段ボールは、たいていこれです。対して強化芯は、でん粉などの強化剤を加えて紙そのものを硬くしたもので、強化180g・強化200gといった規格があります。坪量が同じでも硬さが違う、という話です。
もうひとつ大事なのが、表裏のライナー(外側の紙)とのバランスです。中芯だけ硬くしてライナーが弱いと、表面に波形が浮き出たり、折り曲げたときにライナーが割れたりします。強化芯を使うならライナーもK6以上、というのが業界の目安です。
ライナーの記号も覚えておくと発注が早くなります。
- K:古紙含有率およそ70%。やや高いが強度に優れる
- C:古紙含有率90%以上。安いぶん強度は落ちる
- 数字(5・6・7)は大きいほど強い
段ボール専門通販のアースダンボールは、海外発送向けの推奨仕様として「ライナーK5〜K7」「中芯180〜200g強化」「ダブルフルート」を挙げています。弊社の運用感覚ともほぼ一致します。
サイズ・重量別の選び方
| 3辺合計サイズ | 重量 | 推奨するダンボール |
|---|---|---|
| 〜140サイズ | 〜10kg | 5mm 強化芯 A/F |
| 〜160サイズ | 〜20kg | 5mm 強化芯 A/F |
| 160サイズ以上 | 20kg以上 | 8mm W/F |
境界線上で迷ったら、厚いほうを選んでください。海外輸送でダンボールをケチって得をしたという話を、弊社は聞いたことがありません。
発注時は、この4つを指定する
「丈夫な段ボールをください」では伝わりません。次の4点を数字で伝えると話が早いです。
- フルート:W/F(またはA/F)
- ライナー:K6以上
- 中芯:強化180g以上
- 内寸:商品実寸+緩衝材の厚み
4つ目の内寸は特に重要です。段ボールのサイズ表記には外寸と内寸があり、商品が入るかを決めるのは内寸のほう。ここを外寸で発注してしまう事故が、思いのほか多いです。
耐水は、箱の性能よりポリ袋
撥水加工の段ボールもありますが、コンテナ内の結露や長時間の湿気を完全に防げるわけではありません。前述のとおり、濡れなくても湿度だけで強度は落ちます。
実務的には、商品をポリ袋に入れてから箱詰めするほうが確実で、しかも安い。箱の耐水性能に投資するより、中身側で守る発想に切り替えたほうが費用対効果は高いです。
緩衝材は「振っても動かない」まで
緩衝材の種類より、量と入れ方のほうが結果に効きます。目安は単純で、箱を軽く振っても中身が動かないこと。
- エアクッション:軽量で汎用性が高く、隙間埋めの基本
- ミラーマット:表面に傷が付きやすい商品の保護に
- バラ緩衝材:形状が複雑な商品の隙間埋めに
- クラフト紙:軽量・低コストだが緩衝力は限定的
ただし、重量物は緩衝材では守りきれません。中身が重ければ、落下時にその重量が緩衝材を突き抜けて箱にかかります。この場合は緩衝材を増やすより、箱の強度そのもの、つまり8mm W/Fに上げるほうが効きます。
既製品で妥協するより、数十枚まとめて作る
現実的な話として、海外輸送ではどれだけ丁寧に梱包しても箱が潰れることがあります。だからこそ、箱への投資はケチらないほうがトータルで得になります。
既製サイズが自社商品にぴったり合うことは、まずありません。隙間が出れば緩衝材の量が増え、箱が大きければ容積重量で送料が上がり、それでも中で商品が動いて破損する。既製品で妥協するほど、見えないところでコストが漏れていきます。
商品サイズに合わせたオーダーメイド箱は、数十枚単位からまとめて作れます。既製品より1枚あたりの単価は上がりますが、商品を破損させて再送料・商品原価・返金・評価の低下を負担することに比べれば、はるかに安く付きます。
継続的に海外へ発送するなら、早い段階で自社商品専用の箱を作ってしまうことをおすすめします。一度決めてしまえば、以降は梱包のたびに迷う時間もなくなります。
まとめ
- 海外輸送の基本は8mm(W/F)。5mmを使うなら強化芯に限る
- 相対湿度80%超で強度は半分以下。カタログの耐荷重は乾燥状態の数字
- 交互積みでズレると強度は54〜61%劣化する。積み方は選べない前提で
- 発注時は「W/F・ライナーK6以上・中芯強化180g以上・内寸」を数字で指定する
- 耐水は箱の性能より、内側のポリ袋のほうが確実で安い
- 継続的に送るなら、数十枚単位のオーダーメイドが結局は安い
梱包資材の選定や海外発送そのものでお困りのことがあれば、お問い合わせよりご相談ください。
参考資料
- 段ボールの種類|全国段ボール工業組合連合会(フルートの規格値)
- 段ボール箱が輸送中に潰れるわけ|株式会社NX総合研究所(含水率・積み方と強度)
- 海外発送に耐えられる梱包資材|アースダンボール(海外発送向けの推奨仕様)



