海外発送の関税・諸費用ガイド|米国・EUの最新ルール、HSコード、インボイスまで解説

海外発送では、送料だけでなく、輸入国で発生する関税・輸入税・通関関連の手数料まで含めて考える必要があります。とくに越境ECでは、購入者負担なのか販売者負担なのかを事前に決め、インボイスの内容と合わせて案内することが重要です。
この記事では、日本から海外へ商品を発送する事業者向けに、関税・諸費用の全体像、確認の順番、トラブルを避ける実務上のポイントを1本にまとめました。
まず押さえたい:海外発送で発生しうる4つの費用
- 国際送料:航空便・クーリエ便・船便などの運賃。燃油サーチャージや遠隔地料金が加算される場合があります。
- 関税:輸入国で、品目・HSコード・原産地・課税価格などに応じて課される税金です。
- 輸入時の税金:VAT、GST、売上税など。税の名称・税率・免税基準は国や地域で異なります。
- 通関・配送関連の手数料:通関代行、立替、保管、検査、住所修正など、配送会社や通関状況によって発生しうる費用です。
「関税がかかるか」だけでは不十分です。購入者に届くまでの総コストを把握し、誰が負担するかを販売ページ・インボイス・配送条件で揃えることが、問い合わせや受取拒否の防止につながります。
関税額は何で決まる?
海外向けの関税・輸入税は、原則として輸入国のルールで決まります。主な確認項目は次のとおりです。
- 商品が何か(用途・素材・仕様を含む)
- HSコードまたは輸入国側の品目分類
- 申告価格、国際送料、保険料などの課税価格の扱い
- 原産国と、EPA・FTAなどの優遇税率の適用可否
- 輸入国の免税基準、VAT・GSTなどの税制度
一般に、課税価格は商品価格に国際送料・保険料などを加えて考える場面があります。ただし、実際の算定方法・免税基準・税率は輸入国や貨物の条件で変わります。日本の税関も、日本から外国へ輸出する貨物については、相手国のHSコードや輸入関税率を案内できないと明示しています。最終判断は輸入国の税関、輸入者、通関業者または配送会社へ確認してください。
HSコードは「商品名」だけで決めない
HSコードは国際的な品目分類の基礎です。6桁までは国際的に共通するHS品目表に基づきますが、その先の細分化や実際の税率は国・地域ごとに異なります。たとえば同じ「キッチン用品」でも、材質・用途・構造によって分類が変わることがあります。
確認するときは、曖昧な商品名ではなく、用途・素材・機能・セット内容まで整理しましょう。判断が難しい商品は、発送前に輸入国側の税関・通関業者へ相談するのが確実です。
関税率チェックツールの使い方と活用編も、調査の入口としてご利用ください。
インボイスで最低限そろえるべき項目
申告内容が不明確だと、通関確認・配送遅延・追加費用の原因になります。インボイスには、少なくとも次の情報を正確に記載します。
- 発送者・受取人の氏名、会社名、住所、電話番号
- 商品名(用途や材質が分かる具体的な英語表記)
- 数量、単価、合計金額、通貨
- 原産国
- HSコード(必要・確認済みの場合)
- 発送目的(販売、サンプル、返品など)
- 送料、保険料、関税・税金の負担者に関する配送条件
価格を実態より低く申告したり、「Gift」「Sample」などの表記だけで内容を曖昧にしたりするのは避けてください。税関から追加資料を求められる、通関が保留になる、受取人へ追加請求が発生するといったリスクがあります。
発送前の実務チェックリスト
- 販売先の国・地域と、輸入者を確認する
- 商品仕様を整理し、HSコードの候補を調べる
- 関税・VAT/GST・免税基準を輸入国側の情報で確認する
- 送料・燃油サーチャージ・通関関連手数料を見積もる
- 関税・税金を販売者と購入者のどちらが負担するか決める
- インボイスと販売ページの内容を一致させる
- 高額品・規制品・判断が難しい品目は、発送前に専門家または配送会社へ相談する
米国・EU向け:低額貨物のルールも必ず確認
米国・EU向けでは、少額貨物に関する従来の説明が通用しない場合があります。商品価格だけで「関税はかからない」と案内せず、発送時点の公式情報と配送会社の条件を確認してください。
米国:800米ドル以下でも免税とは限らない
米国では、2025年8月29日から、原則として全世界から輸入される800米ドル以下の貨物について、従来のde minimis(少額貨物の免税)取扱いが停止されています。商品、原産国、HTS分類、輸入方法などにより、関税・税金・手数料が発生し得ます。
特に重要なのは発送国と原産国は別であることです。たとえば中国で製造した商品を日本の倉庫から米国へ発送しても、原産国が日本になるわけではありません。原産国によって追加関税などの取扱いが変わる場合があるため、Commercial InvoiceのCountry of Originは実際の原産地に基づいて記載します。
EU:150ユーロ以下でもVAT・関税を分けて考える
EUでは、低額輸入品のVAT免税はすでに廃止され、すべての輸入品がVATの対象です。150ユーロ以下の一定のB2C輸入販売にはIOSS(Import One Stop Shop)を使い、販売時にVATを徴収・申告する仕組みがあります。
また、2026年7月1日から、EU域外からの150ユーロ以下の対象となる越境EC貨物には、従来の関税免除に代わり、原則として1品目あたり3ユーロの暫定関税が導入されています。対象・例外・申告方法で扱いが変わるため、「150ユーロ以下なら関税なし」とは案内しないでください。
誰が関税・税金を負担するかを明確にする
越境ECでは、関税・輸入税・手数料を誰が負担するかを販売前に決め、購入画面・注文確認メール・インボイスで矛盾なく示すことが大切です。
- DAP:一般に、輸入通関や輸入時の関税・税金は購入者側の負担となる考え方です。
- DDP:一般に、売主側が輸入通関、関税・税金などを負担する条件です。ただし、輸入者になれるか、どこまでの費用を配送会社が立替可能かは国・配送会社・契約条件によって異なります。
購入者負担で販売する場合は、「輸入時に関税、輸入税、通関関連手数料等が発生する場合があり、別途明示している場合を除き購入者負担となることがあります」と、販売条件に合わせて事前に案内しましょう。
よくある疑問
関税がゼロなら、追加費用もゼロですか?
いいえ。関税がゼロでも、VAT・GSTなどの輸入時の税金、通関手数料、配送会社の立替手数料などが発生することがあります。
日本のHSコードをそのまま使えば大丈夫ですか?
6桁までのHSは国際的な共通基盤ですが、輸入国での細分化や最終分類は異なり得ます。輸入国側のルールで確認してください。
購入者に関税が請求された場合、どうすればよいですか?
まず、販売条件と配送条件を確認します。購入者負担の場合でも、購入前に明確な案内がなければトラブルになりやすいため、商品ページ・注文確認メールで事前に知らせる運用がおすすめです。
まとめ:費用を「発送前」に見える化する
海外発送の関税・諸費用は、商品、輸入国、申告内容、配送条件によって変わります。重要なのは、発送後に慌てて対応するのではなく、商品情報・HSコード・インボイス・負担者を発送前にそろえることです。判断が難しい案件は、輸入国側の税関や通関の専門家に確認してから進めましょう。
参考:税関「品目分類とHS」/税関「輸入統計品目表(実行関税率表)」/東京税関「品目分類に関するお知らせ」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。税率、課税価格、規制、通関要件は国・地域・品目・取引条件により変わるため、個別案件は輸入国側の税関、通関業者、配送会社などへご確認ください。最終更新:2026年9月




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